犬の「要求吠え」は遺伝に原因がある?「無視」以外の対処方法もご紹介

犬の要求吠え

近年の日本国内、都会での住宅事情は、マンションやアパートが多く、一軒家でもお隣の家と非常に壁が近いため、騒音のトラブルが増加しています。そして、犬の吠えが苦情の原因になるケースも少なくありません。

犬の「吠え」でお悩みの方は、比較的多いのではないでしょうか。実際に「吠え」でこちらにご相談される方は、比較的多いように感じます。今回は、吠えの中でも「要求吠え」に焦点を絞って解説します。

なぜ犬は吠えるのか?


犬のルーツをさかのぼって考えてみると、犬が吠える一番の理由は、遺伝的要素にあります。

犬と人との関係の始まりは最新の研究によると約3万3000年前に現在の中国で、その1万8000年後から世界的に犬と人が共に暮らすようになりました。

そして、人と犬が共に暮らすようになってから、人は自分たちの仕事をスムーズに進めるため、犬に様々な役割を与えます。

たとえば牧羊犬の役割は、羊を追いかけて特定の場所に誘導するほか、吠えて外敵(泥棒や肉食動物)を追い払うことです。またハウンド系の猟犬は吠えて、獲物の場所を人に伝えることが役割です。

このように、人が犬に仕事をさせるうえで、「吠え」は必要不可欠でした。そこで、昔の人は犬を選択育種する過程で、よく吠える個体を選び、繁殖を行いました。逆にあまり吠えない個体は繁殖から外しました。

以上から、犬の吠えは人が望んで作られた行動であるとも言えます。

近年は良く吠える犬はあまり好まれません。しかし、日本のブリーダーが「吠えにくい」個体に注目してブリーディングすることは、かなり少ないですので、いまだに人間が作り出した吠える行動特性を維持している犬が多いです。

〈人が吠えやすく品種改良した犬種〉
・牧羊種(シェットランドシープドッグ、シェパードなど)
・愛玩種(チワワ、ポメラニアン、トイプードルなど)
・ハウンド種(ビーグル、ダックスフンドなど)

💡犬とオオカミの比較
犬の祖先で知られているオオカミは、特に野生個体の場合、声を出すことは滅多にありません。飼育されているオオカミでも吠えることはほとんどありません。

オオカミは野生で生き抜いていく必要があります。そのため、仮に頻繁に吠えると、敵や捕食対象にこちらの存在をばらしてしまうことになります。ですので、極力声を出さない本能がDNAに刷り込まれているのでしょう。

要求吠えとは


犬の要求

人がおしゃべりしてコミュニケーションをとるように、遺伝的に吠える手段を獲得した犬は、吠えてコミュニケーションを取ろうとします。

犬の要求吠えとは、犬が自分以外の対象(人、犬、ときには物)に向かって、何かを要求する際に吠えることです。子供がスーパーでお菓子を買ってほしいときに、「買ってー!」と要求するのと同じですね。

要求吠えの判断基準は、対象を見つめながら、はっきりと大きな声で「ワン、ワン」と吠えることが多いです。「餌が欲しい」「ケージから出してほしい」「散歩に行きたい」など具体的な要求があって吠える場合と、欲求不満によっての抽象的な吠えの場合があります。

また、犬の要求吠え(要望)に対して、人が常に応えると、犬は何か要求があれば吠えればよい!と学習を強化させてしまうことになります。

要求吠えの対処法


「犬の要求吠えに、人が常に応えると吠えを強化してしまう」

と上記で述べました。確かに犬が吠えることで、散歩や餌などの要求が通るのであれば、吠えは強化されます。そのため、吠えを強化しないために、無視は効果的です。

では犬が要求吠えしたときは全て無視をすればよいのか?というと、一概に全てYESとは言えません。

多くの場合は無視することで、要求吠えは減少します。ただし、場合によっては無視をしても吠えが一向に止まないケースがあります。それは主に体力がある個体の場合、犬本来の要求を満たせていない場合です。

体力のある個体は、2~3時間ほど平気で吠え続けることができるので、要求吠えを無視しようとしても、先に人間が根負けしてしまいます。

また、犬本来の要求を満たせていない例は、運動不足があります。日常から運動不足で慢性的に欲求不満な状態でいると、人間も同様にイライラしやすくなります。

そして、ストレスを強く感じている状態になると吠えやすくなります。(これは、要求吠えに限らず、犬の吠え全般にも通ずることです。)

以前、テリアのミックス犬の飼い主様がご相談に来られました。年は1歳近く、体重は2キロ、未去勢雄のノワという名前の犬です。ノワは興奮しやすい性質で「強い甘噛み」「要求吠え」「家の破壊」「トイレの失敗」など盛りだくさんな問題で飼い主様を困らせていました。

カウンセリングでお話を伺いすると、超小型犬ですぐ疲れそうだから散歩時間が15分程ということでした。ただ、ノワの様子を観察すると、体重が2キロとは言え、かなりハイパーな様子が伺えます。そこで、まずは散歩時間を伸ばすことと、散歩中に同じコースは通らずに様々なコースを通ることで刺激を与えることを提案しました。

その結果、実行してから2日目で大幅に問題が減ったと嬉しいご報告がありました。この飼い主様はカウンセリング後からすぐに、散歩の回数は1日2回、時間は1回1時間程を実行したようです。

このように、散歩の時間は身体の大小に関係ありません。犬種や年齢、個体の体力などが関係します。

ですので、もし愛犬がよく吠える、問題行動が多い!と感じましたら、まずは日々の生活を見直すことをお勧めします。何かストレスが大きくかかっていることはないでしょうか?上記の例のように、散歩の時間を少し変えるだけでも、問題行動が減ることもあります。

~参考文献~
・Arnold Carrie(2015),イヌ家畜化の起源は中国、初の全ゲノム比較より,ナショナルジオグラフィック

・内田圭子・菊水健史(2008),犬と猫の行動学、基礎から臨床へ,学窓社