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2022/7/5一部修正後、一般公開
みなさんの愛犬は、アイコンタクト・トレーニングをしたことはありますか?
此方にご相談いただく飼い主様は、以前に「しつけ教室」や「セミナー・講習会」などで犬のトレーニングについて学ばれた経験がある、愛犬との生活をより良くしたいと積極的に思っている方が8割以上を占めます。
そんな飼い主様から、頻繁に「アイコンタクト」といったワードをお聞きすることがあります。

〇〇のセミナー・しつけ教室でアイコンタクトが良いと習いました!

うちのこアイコンタクトが全然できないので、トレーニングで上手く行かないんだと思います…
実はアイコンタクトには、いくつかデメリットがあります。
それを理解していないと、犬の問題行動を改善するのに、足を引っ張ってしまうことも起きます。
今回は、そんなアイコンタクトについて、皆様に情報をシェアしたいと思います。
目次
アイコンタクトの利点
まずは、アイコンタクトの利点について、整理したいと思います。
麻布大学の菊池氏が率いる研究チームによると、アイコンタクトの利点は以下のように言われています。
犬と人が互いの目を見つめ合うことで、双方に愛情ホルモンである「オキシトシン」の分泌が促進される
勉強熱心である皆様は、なんとなく聞いたことがあるのではないでしょうか。
オキシトシンとは、ヒトのお母さんと赤ん坊が互いの目を見つめ合うことで、分泌されるホルモンであり、愛情、保護、親近感などの感情がわき上がることが分かっています。
この論文では、犬と人間がアイコンタクトを行うことで、母親と赤ん坊が見つめ合うときと同じように、オキシトシンの分泌を促進することを発表しました。
因みに、同研究チームは、犬と飼い主を研究対象に、「語りかけ」「触れ合い」「見つめ合い」などの交流を30分間にわたり記録する実験を行いました。
その後、犬と飼い主の尿中のオキシトシン濃度を測定すると「犬と飼い主の間のアイコンタクト回数が増加すると、双方の脳内オキシトシン濃度が上昇した」というデータが示されました。
よって、アイコンタクトは飼い主と愛犬が生活していくうえで、非常に有益であると言えます。
ただし!
みなさん考えてみてください。

なるほど…💡
赤ちゃんとアイコンタクトするのは、良い効果があるのね!
それじゃあ、赤ちゃんにアイコンタクトを教育しよう!
といった発想には、なかなか至らないですよね…
アイコンタクト・トレーニングをするデメリット
以上の研究結果をみると、素晴らしい効果のある「アイコンタクト」ですが、注意点がいくつかあります。
体の構造上のデメリット
他のドッグトレーナーやドッグビヘイビアリストから、
リードを弛ませながら散歩するために、アイコンタクトを練習することがあるようです。
この方法は私個人的には、お勧めしていません。
なぜなら、近距離で頻繁にアイコンタクトをさせながら歩かせることで、犬の身体に悪影響を及ぼすからです。
犬が自分より背の高い「人間」とアイコンタクトをすることで、自然と犬の首の位置が上がります。
首の位置が上がることで、首・背中の筋肉が張りやすくなります。
筋肉が張るということは、身体に力が入っている状態であると言い換えることができます。
因みに、身体に力が入っているということは、精神的な興奮・緊張にも繋がります。

私は昔、私が馬のトレーニングを行っていたときは、この「首の位置を下げる」大切さを強く教わりました。
馬は首の位置が高い状態で運動すると、身体に負担がかかりやすく、身体の故障に繋がりやすいと言われています。
探求する機会を奪うデメリット
犬が対象物を深く理解するためには、
・近くで見る
・匂いをかぐ
この2つが非常に大切なポイントです。
というのも、犬はヒトでいう「近眼」に近い目の構造を持っていると考えられています。
つまり、遠くの物体にピントを合わせることが難しい可能性が高いと言えます。

ただし、犬は動体視力がずば抜けて良いため、遠くでも動いていればピントが合うと言われています。
また、犬の嗅覚は、感覚器官(目、耳、鼻など)の中で最も発達しています。
人間よりも1000~1億倍も優れいていると言われています。
今ある匂いの情報はもちろん、数時間前の匂いの情報も嗅ぎとれることから、犬はかなりの情報量を嗅覚から得ることが出来ると考えることが出来ます。

この他にも💡
コーネル大学の研究チームによると、犬の脳内で嗅覚に関連する神経と、視覚に関連する神経が接続されていることを発見したという発表がありました。
つまり、簡単に言うと「犬は匂いを嗅ぐことで、目で見た情報に近い認識が出来る」可能性があると考えることができます。
話が少しそれてしまいましたが…
犬にアイコンタクトさせるということは、犬の匂い嗅ぎの機会、つまり情報を得る機会を減らしているとも言えます。
結果的に、散歩中に遭遇する様々な対象物などに対して、しっかりと確認できていないが故の恐怖心が生まれやすい可能性も考えられます。

ワクチンプログラムが終了していない子犬を抱っこして、お散歩練習をたくさんしたのに…
いざ!ワクチンプログラムが終了して、慣れてるはずのお散歩コースの地面に子犬を下ろすと、怖がって歩けない。
なんてケースも何度かお聞きしています。
なぜこのようなことが起きるのか?
以上の情報を整理しながら考えてみてください!
回避行動になっていまう可能性があるデメリット
上記の話と被るのですが、犬が苦手と感じる場面でアイコンタクトを強化していくことで、回避行動としてアイコンタクトが頻発するようになるケースがあります。
回避行動が悪いわけではありません。
ただ、犬は苦手なことがあると、人の介入なしでは自己処理が難しい状況になっているということです。
私は犬が苦手な場面に遭遇したら回避行動ばかりとるのではなく、犬が自分自身の安全(環境)をコントロールできるように理解を促すトレーニングをお勧めしています。

アイコンタクトでなく、アテンションを!
以上から、アイコンタクトは有益である一方で、使い方を間違うと有害になる可能性があることも分かっていただけたかと思います。
上記のデメリットを考慮して、私にご相談いただいている飼い主様&愛犬には、一切「アイコンタクト」練習はしません。
ただし…
犬は人と何かするのが楽しい!
この人は困ったときに助けてくれる!
と犬が思い始めると、犬から人へのアテンション(注目)は自然と増加します。
実際、私のところへご相談頂いている、どの愛犬&飼い主ペアも自然と「アテンション(飼い主を気にして見る行動)」の頻度が増えます。
基本はアイコンタクト練習をしなくても、飼い主との楽しい生活を送っていると、アテンションは自然と増えていくはずです。
そして、このアテンションが増えることで、さまざまな練習がスムーズに進みやすくなります。
みなさんの愛犬は、皆様に「アテンション」がどれぐらいあるでしょうか?