大阪で活動している認定ドッグビヘイビアリストです。
南イリノイ大学で犬猫の基礎栄養学~臨床栄養学を学び、総合栄養食の手作り食レシピ作成も行っています。
目次
症例プロフィール
犬種:トイプードル
年齢:5歳
性別:雌(不妊手術済み)
経緯
・突然咬みつくため、触れることができない
・トリミングで受け入れてもらえない
4歳頃になって急にトリミングサロンで咬みつくようになってしまいました。
受け入れてくれる場所を何件か探すも、4件から断られてしまいました。
最終的に、動物病院でトリミングをしてもらいましたが、興奮しすぎてチアノーゼになってしまい、鎮静剤を使用しないとトリミングできない状態です。
自宅では、いつ噛んでくるか分からないため、ブラシはおろか触れることすら難しい状態です。
先日、友人を自宅に迎えたとき、たまたま愛犬の身体に触れてしまい、何針も縫う大怪我を負わせてしまうことになりました。
お散歩は怖がるため全く行けておらず、音などにも敏感に反応します。
現在は、獣医師に相談して、薬物療法を行っていますが、変化は全くありません。
カウンセリングでの内容
子犬の頃から、散歩にほとんど行けず、犬や人との交流がほとんど無かったことが影響し、さまざまな対象に恐怖反応が出やすい状態であった。
また、てんかん症状が頻繁に出ているようだったため、症状が出た時をデータ化してみた。
すると、特にストレスが強くかかった後に、症状がでやすいことが分かった。
まずは恐怖反応が出やすい場面をピックアップしていき、それに対して環境操作を行い、極力そのような場面に遭遇しないように調整した。
また、必要に応じて恐怖反応を減らすトレーニングも行う。
散歩は、ロングリードを使用して、「匂い嗅ぎ」を重視しながら、徐々に行動範囲を広げていくように調整する。
薬物療法については、獣医師から行動療法を提案されておらず、また薬物療法の開始前後で攻撃行動の変化がないことを考慮して、獣医師と相談の上、減薬していくことにした。
トリミングについては、犬種的に頻繁に行う必要があるものの、動物病院で鎮静をかけておこなう負担を考えて、取り急ぎ家族の中で一番慣れている人がカットできることを目標とした。
初回では、ブラシを見せただけで、飛び掛かって咬みつきにきて、その後すぐにケージに入って震えだす様子から、トリミングの一連の出来事に対して、極度に不安が強い可能性が高い。スモールステップで慎重にトレーニングを進めて行く。
口輪の練習は、飼い主様が極力使用したくないとのお考えのため、安全面を考慮しながら、使用しない方針で進める。
最後に、からだの痒みが強くあるようだったため、行動変容に支障がでることを検討し、動物病院で診断してもらうも、特に異常はない。
そこで、食物アレルギーの可能性を検討して、食事調整も行う。
ご感想
ポポはトイプードルの6歳のおんなのこです。
辻さんにお世話になって約1年半たちます。
最初の頃は、咬む・吠える・ケージの中に引きこもる・頻繁にてんかん発作を起こす…。
そして、一番困ったのはトリミングです。
トイプードルはカットが必須です。
どうにかしてカットしてもらえるところを探しましたが、4件のトリミングサロンに断られてしまいました。
どうしてよいか分からず、目の前が真っ暗で色々なしつけ本を読んでみたり、色々な人に相談したりしていました。
しかし、解決することはできずに困っているところ、辻さんを知り依頼しました。
辻さんの指導は、少しずつ少しずつ成長出来るようにプランを組んで下さり、出来たら褒めてオヤツを与え、知育玩具も必要に応じて利用しました。
最初は、これで一番の課題であるトリミングができるようになるのか、不安がありましたが、ポポは次々とクリアしてくれて、あれだけ嫌がっていたブラシは早々にできるようになりました。
それから、どんどんトリミングですることを練習していき、バリカンをあてても大丈夫になりました。
今から考えると、怖がりのポポに無理やり服を着せたり、ブラシしたりしたりしていた私の方が問題が大きく反省しています。
これからは、ポポの個性も受け止めつつ、まだまだお互いゆっくりと成長していきたいと思います。
総括
薬物療法は、かかりつけの獣医師との相談のもと、早々に減薬~断薬した。
カウンセリング開始から最初は1か月ごとにお伺いし、行動が安定し始めてからは2カ月に1回のペースに変更する。
当初の1番の目標であったトリミングで行う内容(ブラシ、ドライヤー、シャンプー、バリカン、爪切りなど)を一通り問題なく、飼い主様ができるようになり、そのほか様々な刺激に対しても恐怖反応がほとんどでなくなったことから、約1年半で終了とする。
トレーニング開始から終了まで、咬む行動は一度もなかった。
また、様々なトレーニングにより、恐怖刺激が大幅に減少したことも影響し、てんかん症状はほとんど出なくなった。
ただし、今後も恐怖反応が強く出ると、てんかん症状が頻繁に起きるリスクがあるため、そのような状態にならない予防策を伝える。